2011 年 60 巻 11 号 p. 461-465
岡山県新見市大佐山より採取した緑レン石中の鉄の状態解析をMössbauer分光法により行った。用いた試料の化学組成はEPMA分析の結果,Ca2.2(Al2.4,Fe0.4)2.8Si3.0O12.0(OH),であった。単結晶X線構造解析の結果,用いた試料は典型的な緑レン石の構造(P21/m)をとることを確認した。Mössbauerスペクトルから,本試料中で鉄には3種類の状態が存在し,2種類はFe3+に近く,もう1種類はFe2+に近いことがわかった。Fe3+及びFe2+の占有位置の詳細については現時点では不明である。この結果は,八面体サイト中の鉄の占有サイトがM3及び詳細の不明なM3'の2種類あることを示唆している。また,鉄がM1サイトに分配されていないことから,本研究で用いた試料を含む岩帯の生成温度は200℃程度であると推定された。