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X線を照射した希土類イオン付活グラセライトおよびラングバイナイトのESRによる研究
太田 雅壽黒井 茂明坂口 雅一
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1992 年 41 巻 6 号 p. 302-307

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抄録

高性能なESR線量計用の素子の開発を目的とし, グラセライトおよびラングバイナイトの結晶を各種の希土類イオンで付活した試料について, 試料調製方法のちがいによるX線照射で生成するSO3-ラジカルのESRシグナル強度のちがいを検討した。試料調製過程で相転移反応の起こるグラセライト化合物の方が相転移反応の起こらないラングバイナイト化合物よりも希土類イオンが拡散し易く, 母結晶として適していた。また, グラセライト化合物を母結晶とした試料 (試料AG, 試料BG) では, 試料調製方法のちがいによりESRシグナル強度に著しい差異が認められた。これは硫酸ナトリウムと希土類硫酸塩との固溶反応によって母結晶中への希土類イオンの拡散が促進されるためと推察した。
3価で安定なランタン, ガドリニウム, ルテチウムの各イオンで付活した試料では, 電荷補償作用により生成した陽イオン空孔のために陽イオンとの結合バランスを崩したSO42-がX線励起に伴ってSO3-ラジカルになり易く, 放射線被ぼくによる線量当量の測定感度が高くなった。とくに, ガドリニウムで付活 (0.1mol%) した試料AGは10keV未満の特性X線であれば線量当量の検出限界が約2mSvとなり, 線量当量測定用の実用的なESR線量計用素子であることがわかった。

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