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腫瘍細胞溶解試験へのPIXE法の応用
土屋 要大町 和千代松本 信二千葉 廉
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1983 年 32 巻 5 号 p. 219-224

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抄録

小型加速器を利用した安定同位体トレーサ測定法の開発の一環として, PIXE (particle induced X-ray emission) 法を用いてのトレーサ測定試験を行った。研究対象として免疫学研究上の重要性から, クロム元素標識によるMM46腫瘍細胞 (腹水型マウス乳がん細胞) の細胞溶解によるクロム元素の溶出測定系を用いた。ファン・デ・グラーフ型加速器による1.5MeVの陽子を照射し, 発生するCrの特性X線を検出し, Cr濃度とKを内部標準にして規格化したCrの特性X線の計測値との間に比例関係を得た。Crで標識したMM46腫瘍細胞試料, Crで標識した細胞に抗体を作用させて溶解し, ニュクリポアフィルタでろ過し, フィルタ上に残った試料, およびろ液を用いた試料に陽子を照射し, 発生した特性X線スペクトルの解析からCrを定量した。
本方法は放射性同位体を利用しないので, 放射性物質取扱上の制約がなく, また細胞内の他の元素も同時に測定できるので, 細胞溶解の機構に関する別の情報も得られるといった利点がある。

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