陸水学雑誌
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短報
天塩川水系岩尾内ダム直下流域におけるヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata Navas)の優占
岩舘 知寛程木 義邦大林 夏湖村上 哲生小野 有五
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2007 年 68 巻 1 号 p. 41-49

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抄録

 ダムによる流量制御が下流河川の水生昆虫相に与える影響を調べるため,北海道天塩川の岩尾内ダム上下流で水生昆虫密度の比較を行った。岩尾内ダムは,秋季から冬季の間,発電のための断続的な放流操作を行うため,放流を停止している際,河道の大部分は干上がり,澪筋には河川水が溜まった止水域が現れる。調査の結果,カゲロウ目,カワゲラ目は,ダム上流の地点に比べダム直下で密度が著しく減少し,下流へ行くに従い増加する傾向がみられた。一方,トビケラ目のヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata Navas)の密度および全水生昆虫に占める割合は,ダム直下付近で最大となり下流へ行くに従い低下した。また,ダム流入河川および下流の地点では,ヒゲナガカワトビケラの 1 齢から 2 齢の個体が多いのに対し,ダム直下地点では,5 齢の個体が 90 %以上を占めた。同様な齢構成の偏りは,調査を行った北海道のいくつかのダム下流域でも確認された。ヒゲナガカワトビケラは他の水生昆虫に比べ,止水や乾燥に対する抵抗性が強く,この様な耐性は終齢に近い個体ほど高くなる可能性が示された。また,岩尾内ダム直下付近でヒゲナガカワトビケラの密度が最大となった要因として,河床の粗粒化による河床間隙の増加の可能性も示唆された。

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© 2007 日本陸水学会
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