看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2021仙台
セッションID: 2021.3_SP-1
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特別講演
医薬品の安全管理
眞野 成康
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抄録

平成 28 年 6月10日に医療法施行規則の一部を改正する省令が公布された。大学附属病院等で発生したいくつかの医療安全に関する重大な事案を受けて厚生 労働省内に検討会が設置され、「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース等を踏まえた特定機能病院の承認要件の見直しについて」がとりまと められたが、本省令はこれに基づくものである。一方、本邦では 90年代から課題 となっていた新規医薬品開発における「ドラッグ・ラグ」が、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のこれまでの取り組みによってほぼ解消されており、場合によっ ては世界に先駆けて新規医薬品が上市されることもある。こうした背景から、医薬品の市販後安全対策の重要性が増しており、特に未知の副作用モニタリングへ の医療者の取り組みの強化が求められている。

医薬品・医療機器等安全性情報報告制度は、「医薬品、医療機器等の品質、 有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の第 68 条の10 第 2項に基 づくものであり、医師や薬剤師等の医薬関係者に、医薬品の使用による副作用と疑われる事項を知った場合に、それを厚生労働大臣に報告することが義務付け られている。しかしながら、医療者による本制度自体への理解度が十分でないことから、医療機関からの報告が伸び悩んでおり、引き続き啓発することが重要で ある。一方、病棟の薬剤師は、副作用管理のみならず治療効果の向上にも重要な役割を果たしている。がん薬物療法においては、近年多くの分子標的薬や免 疫チェックポイント阻害薬が上市され、治療成績も大きく向上している。当院では、様々な薬物の治療薬物モニタリング(TDM)を実施しており、治療効果を最大化 するために、副作用をコントロールしつつ治療継続する重要性を指摘している。

こうした医薬品安全管理に関する取り組みは、薬剤師だけでなく、院内全体に おける共有が重要であり、上記の医療法施行規則の改正においても医薬品安全情報の周知が求められている。医療機関において発生するインシデントの3 分の1は薬剤に関することであり、その多くが実施の場面で発生していることから、看 護師への的確な注意喚起が必要である。医師、看護師、薬剤師等、すべての医療スタッフがこうした情報を共有することが、患者に適切な医療を提供するうえで 極めて重要である。

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© 2021 本論文著者
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