2024 年 38 巻 1 号 p. 155-163
目 的
助産所における業務継続計画(Business Continuity Plan;以下BCP)作成の目的は,災害時に管理者および職員の安全を確保しつつ,その地域の妊産婦および母子の生命および健康を守るために助産業務を継続させ存続させることであり,各助産所でのBCP策定を推進し災害等の非常時に備える必要がある。本研究は,助産所のBCP策定推進に向けた課題について検討するために,助産所のBCP策定状況や平常時の準備を含む災害対応についての実態について明らかにすることを目的とした。
方 法
研究デザインは横断研究であり,助産所の管理者を対象とし無記名自記式質問票を用いたオンライン調査を実施した。調査内容は,助産所の属性,BCPに対する認知と策定状況,助産所の災害発生に備えた準備や災害発生時の対応,新型コロナウイルス感染症等の感染症発生時の準備や対応についてであった。
結 果
292件の助産所管理者から回答があった。BCPについての認知については,知らないが76.0%,BCPが策定されている助産所は2.4%,準備・検討中は18.5%で,策定されていない助産所は79.1%であった。災害対策に関する基本方針が策定されている助産所は18.2%であり,BCPとしていないものの災害対策に関する検討を行っている助産所があることが分かった。新型コロナウイルス等感染症発生時の準備や対応についてはほとんどの助産所が対応を行っている。
結 論
BCPについて知らないとした助産所が多く,BCPが策定されている助産所も少数であった。助産所の自然災害等の災害発生に備えた準備は行われている部分もあるものの,体系的で十分な実施・対応には至っていないことが明らかになった。助産所が災害発生といった非常時において母子のニーズに応えるケアを継続的に提供できるように,BCP策定を推進していくことが求められる。