日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
ISSN-L : 0917-6357
資料
妊娠糖尿病を再発しなかった女性の日常生活の実態
後藤 千恵柳生田 紀子有森 直子
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 38 巻 1 号 p. 126-134

詳細
抄録

目 的

妊娠糖尿病(GDM)を再発しなかった女性が,かつてGDMと診断されてからどのような日常生活を過ごしたのかを明らかにする。

対象と方法

研究デザインは質的記述的研究である。GDMを再発しなかった女性5名を対象に半構造化インタビューを行った。得られたデータから逐語録を作成し,かつてGDMと診断されてからの日常生活に関連する内容が語られている部分を抽出し,コード化し,サブカテゴリ・カテゴリを形成した。

結 果

GDMを再発しなかった女性は,かつてGDMの【診断に驚き,これまでの生活をふりかえる】と同時に【高血糖が胎児に及ぼす影響を心配する】経験をしていた。そして,診断と共に開始される【医療者から求められた生活の制限が面倒で苦痛と感じる】ことで,心と体に負担となっていた実態が語られた。一方で,【家族の存在に支えられる】ことで,【食事を制限して血糖を管理するコツをつかむ】前向きな経験も語られた。また,GDM治療後も【再発や胎児への影響を心配してGDM時の生活を続ける】ことでGDMの再発を防ぎ,【再発しなかった日常生活を続けようと思う】ことに繋がっていた。そして,【GDM時に得られた家族の協力を継続する】ことは,その日常生活の維持に必要な事柄として語られており,【自分が将来糖尿病を発症することを心配する】思いを現在も持ち続けていることが語られた。

結 論

GDMを再発しなかった女性は,GDM中もGDM治療後も家族の協力を支えとしながらGDMのときに取得した日常生活を継続していた。また,妊娠後は,胎児への影響を考え,子どもを守るためにGDMが再発しないことを常に意識しており,その生活はGDMの再発予防となっていた。GDMを再発しなかったことを支えとする一方で,将来の糖尿病発症を懸念することが,GDM中の日常生活を継続することに繋がったと推測された。

著者関連情報
© 2024 日本助産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top