日本助産学会誌
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原著
助産実践能力習熟段階レベルIの助産師の分娩期のハイリスク妊産婦ケア経験からの学習
松井 弘美齊藤 佳余子二川 香里笹野 京子長谷川 ともみ
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2019 年 33 巻 1 号 p. 27-37

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抄録

目 的

助産実践能力習熟段階レベルIの助産師の分娩期のハイリスク妊産婦ケア経験からの学習を明らかにする。

対象と方法

研究デザインは質的記述的研究。X県内の総合周産期母子医療センター,地域周産期母子医療センター,二次医療機関に勤務する助産実践能力習熟段階レベルIの助産師で,分娩期のハイリスク妊産婦ケアの経験のある助産師20名に,半構成的インタビューを実施しデータを得た。経験からの学習としての助産師の感情,思考と行動,経験から獲得した知識に関する内容に焦点を当て抽出し,コード化を行った。コード間の類似性と相違性の検討をし,サブカテゴリー,カテゴリーへと抽象化した。

結 果

助産実践能力習熟段階レベルIの助産師は,分娩期のハイリスク妊産婦ケア時の感情として【異常な状況への恐怖】【ハイリスクに対応する不安】【他の助産師・医師のサポートによる安心】【助産師としての自覚による勇気】の否定的感情と肯定的感情を抱いていた。ケア中は,【知識の妥当性の確保】をしながら,【知識の発展的活用】を行っていた。その一方,未経験や感情バイアスの作用による【対応困難】な状況も見られた。

ハイリスク妊産婦ケアの経験を通して獲得した知識は,【ハイリスクに関する学習方法】【母体の身体的アセスメントとそれに基づく教育の必要性】【ハイリスクへの対応】【医療チームによる連携】であった。

結 論

助産実践能力習熟段階レベルIの助産師は,否定的・肯定的感情のバランスを取り,先輩助産師,医師により知識の妥当性を確保し,知識を発展的に活用してハイリスク妊産婦のケアを実践することで,母体の身体的アセスメントやハイリスクへの対応,医療チームによる連携についての知識を積み重ねていた。

また,事例を振り返ることでハイリスクに関する学習方法を学んでいた。

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