日本助産学会誌
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総説
出産の振り返りに関する文献検討
鈴木 由美子大久保 功子
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2018 年 32 巻 1 号 p. 3-14

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抄録

目 的

本研究は,出産の振り返りに関する国内外の文献を検討することによって,研究の動向を明らかにし,国内における実践と研究への示唆を得ることを目的とした。

方 法

文献の検索は,出産体験,出産,産後,想起,振り返り,バースレビュー,Childbirth,After birth,Postnatal,Postpartum,Debriefing,Midwife-led counselingをキーワードとし,医学中央雑誌Web版,CINAHL,PubMed,を用いて行った。検索の範囲は,1980年から2016年6月までとした。対象文献は,産後の女性に対する出産の振り返りについて論じられている原著論文とし,結果はGarrardのマトリックス方式を用いてまとめた。

結 果

18件の文献が抽出された。出産の振り返りに関する研究の動向は国内と国外で異なっていた。国内では出産の振り返りを実施した結果を記述した質的研究を経て,その効果を検証した仮説検証型研究が行われていた。一方,国外では出産の振り返りを実施した結果について記述した質的研究と,介入の効果を検証した仮説検証型研究が行われていたが,出産の振り返りという実践の根拠が明確にされていないことが問題になると,緊急事態ストレスデブリーフィングを理論的根拠とした介入研究が中心となっていった。ところが,産後に限らずルーチンで行われる一度限りの振り返りは精神的健康を害する可能性があることがコクランレビューによって示されると,介入を受けた女性の経験を明らかにするための質的研究や実践の実態調査に対する関心が高まっていった。これにより,すべての女性を対象に介入することは適切ではないこと,介入時期は女性の状況に応じて検討する必要があることなどが明らかにされ,これまでの実践は女性のニーズを反映したものではなかった可能性が示された。それ以降,こうした研究結果を受け継ぎ女性のニーズに即した実践の開発に向けた仮説検証型の研究が行われていた。

結 論

国内の実践においては,ルーチンで行われる出産の振り返りを見直していく必要がある。また,女性が必要としている実践を提供していくためには,まず出産の振り返りに関する女性のニーズならびに現行の実践の実態調査が必要である。

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