日本助産学会誌
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資料
妊婦を対象としたふれて・感じる「Mama's Touchプログラム」の実行可能性
―オキシトシン・コルチゾールによる評価;予備研究―
園田 希小川 真世田所 由利子髙畑 香織周尾 卓也堀内 成子
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2018 年 32 巻 1 号 p. 60-72

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抄録

目 的

唾液中オキシトシンおよび唾液中コルチゾールを「Mama's Touchプログラム」の評価指標とすることの実行可能性を検討することである。

方 法

妊娠38週台と妊娠39週台の計2回,プログラムに参加する介入群とプログラムに参加しない対照群の2群比較を実施した。プログラムは,対象者が乳児とその母親の関わりを観察し,抱っこやあやすなど実際に乳児と関わる60分間のプログラムである。両群とも,研究開始前(Pre),研究開始後30分(Post 30),研究開始後60分(Post 60)の3時点で唾液を採取した。唾液採取・オキシトシン濃度の解析およびコルチゾール濃度の解析・乳児とのふれ合いについて分析した。

結 果

妊娠38週台は介入群7名,対照群6名が研究に参加したが,妊娠39週台では介入群5名,対照群5名となった。オキシトシン濃度は,妊娠38週台,妊娠39週台ともにばらつきが大きいという結果であった。コルチゾール濃度は,妊娠38週台,妊娠39週台ともに両群ともPre- Post 30- Post 60と低下した。なかでも,妊娠39週台の介入群ではPre- Post 30で有意に低下していた(p=.044)。69検体(唾液量0.5mLから6.0mL)のうち,オキシトシン濃度は45検体(65.2%)で,コルチゾール濃度は全ての検体でduplicate assayにて解析できた。プログラムを実施した介入群では,乳児の発達や反応は個別性がありふれ合いの体験の内容に多様性があった。

結 語

唾液中オキシトシンおよび唾液中コルチゾールを「Mama's Touchプログラム」の評価指標とすることは,唾液採取法,生理学的解析,乳児とのふれ合いという点で実行可能性が確認された。今後は,対象数の拡大,無作為割り付け,乳児の月齢やふれ合いの内容の統一,母親からの教示を規定するという工夫,唾液採取量の増加などオキシトシン濃度解析可能検体数の増加に向けた改善が課題である。

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© 2018 日本助産学会
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