日本細菌学雑誌
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Helicobacter pylori 病原性因子の胃粘膜上皮におけるサイトカイン誘導に関する役割
山岡 吉生
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2004 年 59 巻 4 号 p. 531-541

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抄録

Helicobacter pylori 感染胃粘膜にみられる炎症性細胞の誘導や活性化には各種サイトカインが重要な役割を果たしている。炎症性サイトカインであるインターロイキン (IL)-8の胃粘膜からの誘導には菌側因子, 特に cag pathogenicity island (PAI) と outer inflammatory protein (oipA) の関与が考えられている。cag PAIの有無とoipA遺伝子のスイッチ状態 (“on”“off”), すなわちOipA蛋白を産生するか否かは密接にリンクしており, 実際の胃粘膜ではcag PAIとOipAが共同してIL-8誘導に関与している可能性が高い。in vitro の系ではcag PAIがIL-8誘導の中心的役割と果たしているが, OipAも一部cag PAIとは異なるシグナル伝達を通じてIL-8遺伝子の発現に関与している。欧米ではcag PAIおよびOipAの存在が消化性潰瘍などの疾患と関与するが, 日本を含めた東アジアの国の菌のほとんどがcag PAIおよびOipAを持っており, これらの因子のみでは病態の違いを説明できない。ただしcagA遺伝子の繰り返し配列数の増加が日本でも胃癌マーカーになりうる可能性がある。

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