1994 年 49 巻 2 号 p. 395-403
Campylobacter jejuniにおいて鞭毛が病原因子として果たす役割を解析する目的で,C. jejuni CF84-340株から紫外線照射により鞭毛欠損変異株を分離し,培養細胞とマウスに対する感染性を親株と比較した。その結果,培養細胞付着性に関しては両菌株間に顕著な差はみられなかったが,蛍光抗体染色法により測定した菌の細胞侵入性は,鞭毛欠損株は親株に比べ3分の1以下へと低下していた。
マウス腸管定着性と血中移行性を親株と鞭毛欠損変異株で比較した結果,鞭毛欠損株は血液から検出されず,また,腸管定着性も著明に低下し,投与菌が早期に体外へ排泄されることが認められた。また,抗鞭毛血清で運動性を抑制した親株も鞭毛欠損変異株と同様の成績を示した。すなわち,C.jejuniの持つ鞭毛およびそれに起因する運動性が,本菌の細胞付着性や腸管内定着性だけでなく,細胞内侵入性や感染動物の腸管壁から血流中へ侵入することにも深く関わっていることを明らかにした。