日本LCA学会誌
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総説
窒素フットプリント:環境への窒素ロスを定量する新たな指標
種田 あずさ柴田 英昭新藤 純子
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2018 年 14 巻 2 号 p. 120-133

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抄録

人間活動によって生成した反応性窒素は、人間および環境に対する脅威をもたらしている。窒素フットプリントは、人間活動を通じた環境への反応性窒素放出(窒素ロス)を、消費者の活動を基準として定量化できる新たな指標である。本稿では、窒素フットプリント算出法として提案されている3つの方法(N-Calculator法、N-Input法、N-Multi-region法)について解説するとともに、これらの評価方法の特徴を生かした活用方法や今後の展開について述べる。N-Calculator法は、消費者一人あたりの食料・エネルギーの消費量に基づくボトムアップ型の分析法である。この方法を使うことで、一つ一つの消費行動がどのように窒素フットプリントに影響するかを定量的に評価、可視化することができる。N-Input法は、食料の生産・輸出入量と、その生産のために使われた農地への窒素投入量に基づくトップダウン分析を用いる。この方法は、複数の国から多くの食料を輸入している国について精緻に算出を行うことができる。N-Multi-region法は、各国・各部門からの反応性窒素排出量について、拡張された世界多地域間産業連関表を用いた産業連関分析を適用する。この方法を使えば、グローバルな貿易の影響を含めた多くの国の窒素フットプリントを評価することが可能であり、複雑な国際サプライチェーンや窒素ロスに関与する反応性窒素の種類を解析することもできる。本稿では、さらに、低減策の主なものとして、食品選択、家庭系ごみの削減、ラベル表示(窒素・カーボン・ウォーターフットプリント)、機関レベルのフットプリント分析(窒素・カーボン)、窒素フットプリントのオフセットの現状と可能性について述べる。また、窒素フットプリントに関する研究プロジェクトについてもいくつか紹介する。

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