日本LCA学会誌
Online ISSN : 1881-0519
Print ISSN : 1880-2761
ISSN-L : 1880-2761
解説
住宅の健康影響評価に向けて
川久保 俊
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 13 巻 2 号 p. 134-141

詳細
抄録

住宅は人々にとって重要な生活基盤であり、居住者の健康を維持増進する良好な住環境の整備は極めて重要な課題である。このような背景に鑑みて、日本全国の住宅の住環境と居住者の健康状態の関係を探るための大規模なアンケート調査が実施されている。住環境の評価には建築環境総合性能評価システム(CASBEE)のツールの一つであるCASBEE-健康チェックリストが用いられている。CASBEE-健康チェックリストは、居住者自らが温熱環境、音環境、光環境、衛生環境、安全環境、安心環境等の環境要素毎に自らの住環境の良し悪しを判断するためのツールである。アンケート調査では住環境の評価と共に居住者自身とその家族の健康状態についてもデータが収集されている。アンケート調査で得られた住環境と居住者の健康状態に関するデータについてクロス集計が実施されると共にフィッシャーの直接法に基づいて疾病毎にオッズ比と有意確率が算出されている。その結果、住環境の好ましくない群に対して住環境の好ましい群の疾病毎のオッズ比は全て1.0を下回り、住環境が好ましいほどオッズ比の値も総じて低くなる傾向が確認されている。上記の結果からも住環境は居住者の健康決定要因の一つとなっている可能性が示唆されており、今後住宅の健康影響評価を実施する上で基盤となる情報が整備されつつある。

著者関連情報
© 2017 日本LCA学会
前の記事 次の記事
feedback
Top