2010 年 51 巻 4 号 p. 199-206
われわれはSparassis crispaより可溶性の β-glucan (BG):SCGを精製し,その生物活性について検討してきた.BGの白血球への応答性にはマウス系統差が存在し,DBA/2マウスはSCGに強く応答し,in vitro においてサイトカイン産生を誘導する.そこで本研究では,DBA/2マウスにおける in vitro 培養の条件設定について精査し,SCG添加の至適条件を設定したうえでDNAマイクロアレイを用いて,BGにより誘導される因子を網羅的に解析した.まず,SCGの至適な刺激時間を検討したところ,培養開始直後に添加した場合のみならず,24時間後または30時間後に添加しても有意なサイトカイン産生が認められた.遺伝子発現の解析においては最も短時間刺激することが夾雑刺激を示しにくいと考え,さらに前処理時間を延長し,36時間目にSCGを添加し,その後4時間でRNAを調整することとした.この条件で得た検体を用いて網羅的解析を行ったところ,SCGにより発現が2倍以上亢進する遺伝子は,サイトカインやケモカインに関する遺伝子をはじめEdn1,Ptgs2など18種類であった.さらに,発現産物のレベルでこれらの遺伝子を評価したところ,サイトカインに加え,prostaglandin E2 (PGE2) が検出された.以上の結果から,脾細胞は培養前半でBGに対する応答性が高まり,その後SCGによる様々な因子の発現誘導が起こるものと考えられた.