2000 年 41 巻 1 号 p. 17-21
66歳女性の左前腕に生じた黒色真菌感染症の症例を報告した.臨床的に単発性,暗紅色の扁平隆起性小結節を呈し,病理組織像は,真皮から皮下組織におよぶ慢性炎症性肉芽腫で,組織内菌要素としてはsclerotic cellは見られず,菌糸型のみであった.分離菌はExophiala spiniferaと同定された.本菌の感染症は本邦では3例目である.治療はイトリゾール200mg/日の内服と局所の温熱療法を行い,臨床的に治癒したかに見えたが,内服92日目に切除したところ,同菌を検出した.黒色真菌感染症では,小さな病変であれば外科的切除がより確実な治療法であると思われた.