日本医真菌学会雑誌
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真菌感染,特にクリプトコックス症における肉芽腫形成
伊藤 誠山岡 秀之松永 光太郎小木曽 暁宮田 和幸発地 雅夫
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1997 年 38 巻 3 号 p. 215-222

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抄録

ラットにCryptococcus neoformansを経静脈接種し,肝臓および血管内肉芽腫の構成細胞の形質を電顕的内因性ペルオキシダーゼ染色により検討し,さらに中枢神経系での肉芽腫性病変とミクログリアの活性化との関係を免疫組織化学的に検討した.肝臓ではクッパー細胞が主体となって肉芽腫が形成され,血行性播種の過程では血管内に単球由来のマクロファージ(Mφ)が主体となり血管内肉芽腫を形成した.中枢神経系では肝臓,脾臓の肉芽腫性炎症が消退した後も,持続性感染により脳内に肉芽腫性炎症が広がった.中枢神経固有のミクログリアは感染後9日目から活性化され,Class II MHC抗原,CD11b/cの発現が脳室周辺や白質に生じた.同時に経時的に数と大きさを増して感染性肉芽腫が皮質・白質を問わず多数形成された.しかし,皮質内の肉芽腫周辺には活性化されたミクログリアの分布は認められず,活性化されたミクログリアは白質の肉芽腫周辺に多く分布していることから,肉芽腫形成の場により活性化ミクログリアの関与は異なっていた.感染後期にはCD4+ T cellとCD8+ T cellの浸潤が肉芽腫内に多く認められた.臓器により,また感染の経過により肉芽腫形成の主体は在住性Mφであったり単球由来のMφであったり様々であり,Mφが直接肉芽腫形成に参画することも,炎症性メディエイターの分泌を介して肉芽腫性炎症の増幅に間接的に関与する場合もある.

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