松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
当院救急外来を受診し、低血糖に対する入院加療を要した糖尿病症例の検討
佐々木 基史多田 裕子大國 智司
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キーワード: 低血糖, 救急, 高齢者
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2012 年 16 巻 1 号 p. 11-14

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抄録

糖尿病治療による低血糖は、近年心血管イベントの誘因として知られている。また、高齢患者の多い当院の医療圏においては、繰り返す低血糖による認知機能低下や、遷延性低血糖に対する入院治療をきっかけとしたADL の低下も問題となる。2006 年度から2010 年度の間に当院救急外来を受診し、低血糖による入院治療を要した症例について検討を行った。5 年間に低血糖による入院治療を要した糖尿病症例は35 例であった。平均年齢:77.9±11.8 歳、糖尿病罹病期間:15.2±10.0 年、HbA1c(国際標準値):6.9±1.7%、来院時血糖値:37.6±17.1 mg/dl、全例でスルホニルウレア薬(SU 薬)あるいはインスリンによる治療が行われていた。基礎疾患として慢性腎臓病(推算糸球体濾過量(eGFR)<30 ml/min)が5 例、うつ病3 例、認知症3 例、肝硬変1 例を認めた。平均入院期間:10.6±16.1 日で全例軽快したが、入院をきっかけに施設入所が必要となった例が2 例あった。低血糖の誘因としては、発熱、嘔吐などの原因による食事量の摂取の低下(シックデイ)が最も多かったが、80 歳以上の超高齢者では、特に理由のない食事量の低下がきっかけとなった例を多く認めた。低血糖による入院治療を要する症例の多くは高齢者であり、家族を含めたシックデイに対する対応の指導、低血糖のリスクの少ない治療法の選択を考慮する必要がある。

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