日本健康開発雑誌
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原著論文
新型コロナウイルス感染症拡大における学童期の子どもをもつ家庭の現状と課題
亀田 佐知子 井戸 ゆかり園田 巌横山 草介早坂 信哉
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2022 年 43 巻 p. 13-25

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抄録

背景・目的 本研究では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、行動制限等の対策がとられ、ストレスの高い状況である学童期の子どもをもつ家庭の実態調査を行い、家庭における保護者と子どもの状況と課題を明らかにすることを目的とした。

方法 学童期の子どもをもつ保護者319名(岩手県105名、東京都108名、沖縄県106名)を対象とした。質問紙を作成し、2021年1月にweb調査会社を通し実施した。

結果 緊急事態宣言時の外出自粛時について、東京都は他県に比較し家庭において「心の問題」55名(50.9%,p=0.001)、「家族内の人間関係」34名(31.5%, p=0.004)、「知人との人間関係」20名(18.5%, p=0.001)の不安が有意に高く、子どもでは「教育」66名(61.1%, p<0.001)の不安が有意に高かった。また、子育て環境の変化と現在の仕事に対する影響(5段階尺度)では、東京都は他県よりも有意に平均値が高く、良い影響があったと評価した保護者が多かった。良い影響としては子どもとの関わりが増えたことが挙げられ、悪い影響としては自分一人の時間が無くなる等の課題も挙げられた。そして、休校による教育の遅れについては保護者がその補いのために様々な形態の学校以外の学習の場で成果を感じていることが示された。また、ICT授業の導入は遠隔授業やハイブリッド授業の導入をしてほしいという保護者が多いことが示唆された。

考察 学童期の子どもをもつ家庭は、緊急事態宣言時の行動制限等で不安やストレスを抱えている。行動制限により子どもと関わる時間が増加した家庭では、子どもと密になりストレスが高いと予測していたが、子どもとの関係が深まったことを好意的に捉え、仕事へも良い影響を与えていると感じている保護者も多いことが明らかになった。また、保護者は教育の遅れの不安を解消するため、子どもを取り巻く環境・資源を有効に活用し成果を感じていると考えられる。今後はデータを重ね子どもへの適切なケアについて検討していきたい。

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