日本東洋医学系物理療法学会誌
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第41回学術大会 特別講演
温熱刺激の臨床への応用
- 和温療法の効果とその作用機序 -
宮田 昌明
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2016 年 41 巻 2 号 p. 1-7

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抄録

和温療法は、60℃の乾式遠赤外線サウナを用いたサウナ浴を15分間施行した後、出浴直後に毛布による30分間の安静保温を追加する温熱療法である。深部体温を1℃上昇させる温熱刺激を治療に応用した和温療法の心不全、閉塞性動脈硬化症(ASO)、生活習慣病への効果とその作用機序について概説する。  和温療法の心不全に対する急性効果は、体温上昇に伴う末梢血管拡張作用により心臓に対する前・後負荷が軽減し、心拍出量が増加することによりもたらされる。慢性効果として、心・血管内皮機能や心不全症状の改善、心拡大や心室性不整脈や神経体液性因子、酸化ストレスの有意な減少、さらに自律神経の是正が認められる。後ろ向き研究であるが5年間の経過を検討し、和温療法は心不全死あるいは再入院を有意に抑制し、心不全患者の予後を改善することが示された。  我々は、動物実験により、和温療法が血管内皮における一酸化窒素合成酵素の発現を亢進させることを明らかにした。このことは、和温療法による慢性効果発現の重要な機序の一つが血管内皮機能の改善であることを示唆する。  ASOに対する和温療法の効果を検討するために、Fontaine分類I〜IV度のASO患者に、和温療法を10週間施行し、その結果visual analogue scaleで評価した下肢疼痛は有意な改善を認めた。歩行距離とABI(ankle brachial index)は有意に増加し、サーモグラフィーによる体表温度とレーザードプラ血流計による下肢血流量は有意に上昇した。さらに、下肢血管造影でも閉塞部位周囲での血管密度の増加を認め、皮膚潰瘍を有する症例では、潰瘍が縮小・治癒した。  また、生活習慣病を有する男性患者に対して和温療法を2週間施行し、血管内皮機能を改善させることを報告した。さらに、生活習慣病患者に和温療法を2週間施行し、生活習慣病患者の酸化ストレスを低下させることも明らかにした。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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