2004 年 1 巻 p. 40-51
この報告は、フランス革命の申し子、フランス国立文書館開設以降の近現代アーカイブズの歩みと、19世紀末にアーカイブズの編成と記述に関する教科書「ダッチ・マニュアル」が上梓され、その後発展してきたアーカイブズ学の軌跡を、日本におけるそれらの受容過程を踏まえて概観し、今後のアーカイブズ学を構築するために、現在の課題について触れることを目的としている。 アーカイブズは、19世紀にヒストリカル・ドキュメントの宝庫として定着したが、第2次世界大戦後、アーキビストがアーカイブズ保存に積極的に関与し始め、一方では、口承アーカイブズの保存、すなわちヘリテージを担うものの保存という面が導かれた。他方では、電子記録の保存、原本性を如何に保証するかという面が検討されたことにより、記録化することの重要性(これには口承ヒストリーも含む)が指摘され、記録化を支えるエビデンスの保持が核心とされてきている。このエビデンスを保証するものは、アーカイブズを成り立たせているコンテクスト・構造・内容などのメタデータであり、これはアーカイブズの編成と記述のコントロール(ISAD(G)、EAD)と同一な世界を構成している。今後、これらの歩みを踏まえて、図書館情報学などと協同で、新たな地平を築きあげなければならない。