2003 年 3 巻 p. 22-33
知事と議会を直接公選とする二元代表制のもとで,わが国で最大規模の官僚制組織である「東京都政」の政策決定はいかに行われているか。とりわけ,東京における最後の新都市開発とも思われる臨海副都心開発の生成過程は,政治と行政,国政と都政の狭間に揺れながら新都市が形成されていった,極めてユニークな政策例である。
住民参画の時代と言われるように「開かれた過程」での政策形成が中心となる自治体政治の中で,東京の臨海副都心開発は,都民に対して極めて「閉じた過程」での政策形成であった点に特徴がある。しかも,都知事の交代により議会で決定した政策公約が反故にされるなど,議決機関としての議会の政策決定とは何かが問われた事例である。事実,臨海副都心開発は当初計画とは極端に違ったものとして形成されていった。
中央集権体制が1世紀以上続いたわが国では,地方自治体が主体的に政策を形成していった歴史は極めて乏しい。臨海副都心開発は東京都保有の土地の上での開発政策であったがゆえに,その力量が問われた。だが,政策形成能力の未熟さがあらわになった例でもある。知事の交代で政策手法がガラッと変わり,結果が大きく異なってしまう。大統領制とは言え,都市形成がその対象になった時,被害が住民に及ぶ。最近の公共事業見直しも類似の傾向がある。しからば自治体における望ましい形の政策形成はいかにあるべきか,その点を明らかにしようとする。