日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-3323
Print ISSN : 2433-7773
第8回日本トレーニング指導学会大会
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ポスター発表
椅子立ち座りのパワー指標と移動能力との関係
*寺田 梨奈仲 立貴*島 典広菅野 昌明
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p. 45-

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抄録

【目的】10回椅子立ち座りテスト(Sit to Stand test:STS)におけるパワー指標(STS Power Index:STS-P)は下肢長の影響を加えたもので、STSの所要時間(STS Time Index : STS-T) よりも筋力やパワーなどとの関連性が高いことが報告されている。しかし、トレーニング指導 の実践現場や多人数の体力を一同に測定する体力測定では、時間的な制約から下肢長を計測す ることは容易ではなく、身長などから算出する方法が簡便性を保証できるとも考えられる。ま た、これらの指標と歩行能力や階段昇段能力などの日常生活動作との関連性を明らかにするこ とで、測定結果の妥当性や利便性を明確にできると推察される。そこで本研究は、年齢の異な る男女を対象に10回椅子立ち座り動作を測定し、STS-TおよびSTS-Pと10m速歩、階段昇段能力 との関連性を検討することを目的とした。 【方法】成人男女2055名、男性687名(年齢:21~94歳)、女性1368名(年齢:20~97歳)を対 象とした。身長、体重、STS時間(STS-T)、10m速歩時間、10段階段昇段時間を計測し、STS-T および身長と椅子の脚長から算出したSTS-Pと10m速歩時間、10段階段昇段時間との関連性につ いて、各年齢別(①20~39歳、②40~59歳、③60歳以上)に検討した。 【結果】STS-Tと10m速歩時間との関係は、女性(①r=0.19、②r=0.40、③r=0.65)、男性(① r=0.46、②r=0.56、③r=0.69)ともに有意な正の相関関係が認められた。STS-Tと階段昇段 時間との関係は、女性(①r=0.29、②r=0.30、③r=0.55)、男性(①r=0.45、②r=0.44、③ r=0.55)と有意な正の相関関係が認められた。STS-Pと10m速歩時間との関係は、女性(①r=- 0.27、②r=-0.42、③r=-0.67)、男性(①r=-0.49、②r=-0.56、③r=-0.67)と有意な負の相関 関係が認められた。 STS-P と階段昇段時間との関係は、女性(①r=-0.26、②r=-0.34、③r=- 0.55)、男性(①r=-0.42、②r=-0.42、③r=-0.53)と有意な負の相関関係が認められた。STS-T とSTS-Pとには、有意な負の相関関係(r=-0.89)が認められた。 【考察】STS-TおよびSTS-Pと10m速歩時間、階段昇段時間との関係が60歳以上で高くなる要因と して、高齢者の歩行速度の低下が素早い力の立ち上がりに使用される筋パワーの低下に関与し ていることが考えられる。また、STS-TおよびSTS-Pは、階段昇段時間より10m速歩時間が高い 関連性を示した。これには、階段昇段に活動する筋群よりも10m速歩に活動する筋群の方がSTS に用いられる筋群に類似することが関係していると考えられる。一方、STS-Tと身長を用いて 算出したSTS-Pは、有意な負の相関関係が認められたことから、身長を用いたSTS-Pの算出方法 について再検討する必要性がある。 【現場への提言】高齢者は若年成人に比べ素早い立ち上がり能力が移動能力に高く関係してい る。そのため、高速で行うSTSに類似したトレーニングが歩行能力の改善に有効的であると考 えられる。また、階段昇段能力は10m速歩と比較してSTSと関連性が低いことから、STSに類似 したトレーニングに階段昇段動作に活動する筋群のトレーニングを加える必要がある。

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© 2019 日本トレーニング指導学会
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