2014 年 18 巻 2 号 p. 150-158
【目的】本研究は,頸椎装具装着の有無と頭部角度の変化が,水嚥下のしやすさに及ぼす影響を検討することを目的として行った.
【対象と方法】健常成人27 名(平均年齢22.5±3.5 歳)を被験者とした.
頭部角度は,中間位,伸展位,装具中間位,装具伸展位の4 条件を設定した.水嚥下のしやすさの評価指標には,自由飲水一口量,最大一回嚥下量,主観的嚥下のしやすさ(口への含みやすさ,飲み込みやすさ,喉の通りやすさ)を用いた.
統計学的解析は,反復計測によるTwo-way ANOVA を用いた後,多重比較検定を行い,危険率5% 未満をもって有意とした.
【結果】 1.自由飲水一口量は,装具中間位だけが他の3 姿勢と比較して有意に少なかった(p<0.01).
2.最大一回嚥下量は,中間位,装具中間位が,伸展位,装具伸展位と比較して有意に少なかった(p<0.01).
3.口への含みやすさは,中間位が伸展位と比較して(p<0.01),装具中間位が装具伸展位と比較して(p<0.01),有意に口に含みにくいと評価された.
4.飲み込みやすさは,装具中間位,装具伸展位が中間位,伸展位と比較して有意に飲み込みにくいと評価された(p<0.01).
5.喉の通りやすさは,中間位,装具中間位が伸展位,装具伸展位と比較して(p<0.01),装具中間位,装具伸展位が中間位,伸展位と比較して(p<0.05),有意に喉を通りにくいと評価された.
【結論】 水嚥下のしやすさの各種指標には,頭部角度の変化も頸椎装具の装着も,有意な影響を与えていることがわかった.また,頸椎装具を装着した場合に,水嚥下をしやすくするには,頭部角度の調整が有効となる場合があることが示唆された.