2018 年 13 巻 4 号 p. 249-267
斜面の法肩から縦方向に補強材を打設する縦打ち補強土工法は,狭あいな場所でも施工可能であるため,近接施工や既設構造物の保全工事において活用の機会が見込まれる。しかし,本工法のような補強は実務的に使われているが,その力学挙動は十分に解明されていない。そこで本研究では,実大の試験盛土に補強材の打設角度や打設間隔が異なる補強を施工し,想定すべり面に対応する背後荷重を作用させて,斜面前面の変位や補強材の断面力などを計測した。その結果,斜面側が斜杭のケースは,背面側が斜杭のケースよりも斜面の変位抑制効果が高いことが明らかとなった。補強材では軸圧縮力や変形に応じた曲げモーメントが計測された。全体的な挙動については,再現解析を実施して計測挙動の妥当性を確認し,補強効果を評価した。