1980 年 46 巻 5 号 p. 607-614
1. 病原菌が維管束を経由して種子に侵入する経路は「果柄→果柄基部→子室組織→胎座→種子の胎座着生点(へそ)→種皮内維管束」と推定された。これらの各部位から病原菌が検出された。
2. 果肉未腐敗の罹病株着生果実から採種した供試種子約1000粒の中で, 23個の保菌種子が検出され,そのうち6個の種子の種皮維管束に,本病原菌の厚膜胞子らしい菌体が観察された。その形状および大きさは,培地上に形成されたユウガオつる割病菌の厚膜胞子とほぼ一致した。
3. 種皮維管束内での菌体は,道管の外面に付着したもの,道管と道管の間の柔組織に埋没したもの,道管内部に分布すると想定されるもの等が観察された。
4. 以上のように,罹病株に着果し,果肉の腐敗の認められない果実内の各部位から病原菌が検出され,種子からも低率ながら病原菌が検出された。このような果実では,病原菌が維管束を経由して種子に移行するものと推定される。