日本植物病理学会報
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ハウス栽培ホウレンソウの土壌病害の発生とその病原菌
内記 隆加納 正和
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1978 年 44 巻 5 号 p. 543-553

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抄録

1. 岐阜県高山市を中心とする冷涼地帯のハウス栽培ホウレンソウの土壌病害の発生実態とそれに関与する病原菌につき,月別,土壌や作歴を異にする地域別およびホウレンソウの生育時期別に調査した。
2. 発病株率,ハウス当り発生面積ともに栽培初期の5月と末期の10月に少なく,6∼9月の夏ホウレンソウで高い値を示した。
3. 低温期の5月にはPythium spp.による立枯病の発生が僅かに目立ち,高温期の6∼8月は2∼4葉期のRhizoctonia立枯病の被害が最も大きく,ついで生育中期以降はF. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病とR. solaniによる株腐病が増加した。R. solaniはホウレンソウの全生育期間中根部を侵し,それによるRhizoctonia立枯病,株腐病は当地域の夏ホウレンソウ栽培においてF. oxysporum f. sp. spinaciaeによる萎ちょう病とともに最も重要な病害である。その他低温期にはPythium spp.による子葉期の立枯病が重要である。
4. その他,ホウレンソウに対し病原性を示すものはAphanomyces sp., F. solani, 2核のRhizoctonia sp.であるが,それらの分離率は極めて少ない。
5. 黄褐色の軽埴土壌,連作年数の多い土壌,水田跡地より畑地土壌,標高の低い地帯で概して発病が多い傾向にあった。またこれらの地域からはF. oxysporumが多く分離された。一方Rhizoctonia立枯病と株腐病,Pythium spp.による立枯病は病原菌の分離率から一部黒ボク土壌を含む灰∼黒色の埴壌土,水田跡地のハウスで発生し易い傾向にあった。

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