日本植物病理学会報
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メロンがんしゅ病病原放線菌胞子の発芽とその活性化
吉田 政博西山 隆行山口 武夫小林 研三
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1994 年 60 巻 6 号 p. 711-716

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抄録

メロンがんしゅ病病原放線菌胞子の発芽状況を調べ,未発芽胞子の存在とそれらに対する発芽活性化処理の効果を検討し,休眠状態の胞子の存在を確認した。28°C,14日間培養による形成胞子(新生胞子)と28°C,28日間培養後5°C,28日間保存した胞子(冷蔵胞子)のいずれでも,胞子発芽は28°Cで培養後3時間目から確認された。新生胞子では最終的に発芽するほとんどの胞子が24時間目までに発芽したが,冷蔵胞子の発芽は比較的非同調的で発芽率の増加は緩やかに進み,最終的な発芽率に達するまでに新生胞子より1∼2日程度の遅延が認められた。胞子の発芽率は2種の培地上において,新生胞子で84.0∼87.0%,冷蔵胞子で81.2∼83.3%を示し,約10∼20%の未発芽胞子が存在した。これらの未発芽胞子の発芽を活性化するために加熱処理をした結果,40°C,20分間処理においてコロニー形成率は無処理区の110.0∼115.1%まで増加させることができた。さらに,6種の胞子活性化剤の処理(40°C,20分)効果を試験した結果,0.00625∼0.05%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および1∼2%の酵母エキス(YE)において熱処理のみの対照区より発芽の活性化が認められ,とくに0.025%のSDSではコロニー形成率を121.2%まで高めた。一方,0.025% SDSと各種濃度のYEを組み合せて40°C,20分間の処理を行ったが,すべての組み合せ処理区において発芽の活性化は認められず,むしろ発芽に阻害的に作用した。以上のことから,本病原放線菌胞子には培地上で容易に発芽しない休眠状態にある胞子が存在し,その休眠打破には0.025% SDSによる40°C,20分間処理が最適で,この処理によって休眠状態のほぼすべての胞子の発芽を活性化できることが示唆された。

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