日本植物病理学会報
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非病原性Fusarium oxysporumによるサツマイモつる割病に対する全身的な抵抗性の誘導
小川 奎駒田 旦
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1986 年 52 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

非病原性F. oxysporumとサツマイモつる割病菌との対峙培養において,両菌の間に抗生は認められなかった。発病抑制は,苗の切口をパラフィンおよび非病原性F. oxysporumの死菌体で閉鎖した場合には生じず,生菌体の接種によってのみ生じた。非病原性F. oxysporumを前接種した部位から離れた組織で病原菌の感染が起こった場合にも,発病が抑制された。このことは全身的な抵抗性の誘導を示している。また,本菌と病原菌との同時接種でも発病は抑制された。前接種された非病原性F. oxysporumは苗基部に局在し,導管を通じた上方への移動はほとんどみられなかった。一部は苗基部の皮層および柔組織のごく一部に侵入し,部分的な壊死を起こした。前接種直後に苗の基部切口を切除すると発病抑制効果は消失したが前接種2日後に切除すると,その効果は消失しなかった。非病原性F. oxysporumの発芽液は,僅かながら,発病抑制を示した。このように本交叉防御における全身的な抵抗性は,苗の基部切口に接種された非病原性F. oxysporumがサツマイモ組織に局部的かつ軽度の感染を起こすことによって,生じるものと考えられた。

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