日本植物病理学会報
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いもち病菌のカスガマイシン耐性菌と感性菌の競合
伊藤 征男山口 富夫
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1979 年 45 巻 1 号 p. 40-46

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抄録

1. KSM使用中止による耐性いもち病菌の密度低下の原因を明かにするため,病斑形成過程における耐性菌と感性菌の競合について検討した。
2. 両者胞子の等量混合噴霧接種により形成した病斑は耐性菌,あるいは感性菌のいずれかによるものであり,両者が同一病斑に混在することはなかった。
3. 等量混合噴霧接種により形成した病斑数は山形県下で採集した菌の1組合せを除き,耐性菌による病斑よりも感性菌による病斑が多かった。
4. 等量混合パンチ接種による病斑上に形成した胞子数は感性菌胞子が耐性菌胞子に比べて多く,耐性菌による病斑形成,および胞子形成は感性菌に比べ劣った。
5. 供試菌はすべてイネ苗に対して進展性の病斑を形成し,24時間接種箱内にインキュベートして形成される病斑数には耐性菌,感性菌の間に有意差はなかった。
6. 感性菌は耐性菌に比べて感染に要する時間が短かく,短時間の接種箱内処理での感染率が高かった。
7. 感性菌は耐性菌に比べて付着器形成に要する時間が短かく,短時間での形成率が高かった。
8. 以上の結果からKSMの使用中止による耐性菌の密度低下の原因の一つは,病斑形成過程における競合力の弱さであり,これは付着器形成力が弱く,感染成立に長時間を要するためと結論した。

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