2021 年 48 巻 4 号 p. 187-192
目的:超音波検査室は適切な感染対策が必要とされる場であるにもかかわらず,ゲルボトルやウォーマーの運用については明確な定めがなく,現状では感染対策上不十分と考えられる.諸外国では過去に超音波ゲルを介した院内感染事例が報告されており,わが国での発生も懸念される.そのため,我々は現状のゲルや周囲環境の汚染状況の調査,洗浄後の経過観察を行い,院内感染対策を目的としたゲルボトルやウォーマーの取扱い方法の確立を目指した.対象と方法:洗浄前,洗浄後,ゲル使い切り後,洗浄3週間後のゲルボトルやウォーマー,ボトルの乾燥かごより検体を採取し,培養・同定検査および菌量の測定を行った.結果と考察:洗浄前にはボトル口や複数のウォーマーから皮膚常在菌や枯草菌が検出され,検査手技の影響や環境からの汚染が考えられた.十分な洗浄・乾燥後では,いずれの部位からも菌は検出されなかった.ゲル使いきり後および洗浄から3週間後では,ウォーマーから枯草菌が検出された.結語:検査環境の常在菌や環境菌による汚染は,十分な洗浄・消毒により除去されることが明らかとなった.また適切な洗浄により,ボトルの再利用は可能であると考えられた.