水文・水資源学会誌
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原著論文
アジアモンスーン形成におけるソマリジェットの役割とその変動性の解析
谷口 健司小池 俊雄
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2003 年 16 巻 3 号 p. 225-235

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抄録

高度な水資源計画の実現には, 高精度の長中期的気候変動予測および短期の気象予報が要求される. 特にアジア域においては夏季アジアモンスーンが人々の生活に及ぼす影響は大きい. しかし現在のところ, その物理メカニズムは明らかでない. 既往の研究および再解析データを用いた850hPaにおける風向·風速場の観察から, ソマリジェットが夏季アジアモンスーン開始の一つのシグナルとなるとの知見を得た. また, 再解析データ及び衛星データを用いたモンスーン開始期の大気温度, 風系, ジオポテンシャル高度といった気象要因に関する偏差場の観察より, ソマリジェット形成に関連すると見られる特徴的な偏差域を同定し, それらの年々変動の比較を行うことにより関係性を調べた. その結果, 各気象状況の季節進行の遅れや早まりの年々変動に良い対応が見られ, ソマリジェット形成·維持過程として以下のような仮説を導くに至った: i) チベット高原西部領域の大気温度上昇, ii) チベット高原西部周辺域の上層大気の変化に伴う下層低圧場 (モンスーントラフ) の形成, iii) モンスーントラフとアフリカ南東部における高圧場との気圧傾度の形成, iv) ソマリジェット形成.

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© 2003 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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