魚病研究
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養殖マダイのイリドウイルス感染症
井上 潔山野 恵祐前野 幸男中島 員洋松岡 学和田 有二反町 稔
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1992 年 27 巻 1 号 p. 19-27

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抄録

 1990年秋に初めて発生し, 1991年に西日本の主要養殖県に発生域が拡大した養殖マダイの大量斃死の原因究明を行った結果, 以下のことが明らかとなった。 1.病魚の外観は体色の黒化や褪色, 体表や鰭の出血性のスレを特徴とし, 剖検すると鯉の褪色, 鰓弁の点状出血や先端部からの出血, 囲心腔内の出血等が観察された。 2.病理組織学的には脾臓組織のほか, 心臓の心内膜下, 鰓の中心静脈洞内皮および中肋の軟骨膜に接する組織間隙, 腎臓の間質組織と糸球体に肥大球形化した細胞が多数観察されるのが特徴であった。肝臓ではその出現頻度は低かった。 3.電顕観察ではこれらの異形肥大細胞の細胞質内に平面的には6角形を呈する, 直径が200~240nmのウイルス粒子の増殖像が観察された。組織切片のフォイルゲン反応による核酸染色では異形肥大細胞の細胞質にDNAが検出され, 本ウイルスはDNAウイルスの一種のイリドウイルス科に属すると考えられた。 4.病魚の脾臓砕磨濾液をRTG-2, CHSE-214, FHM, BF-2およKRE-3細胞に接種すると, 球形化を特徴とするCPEが発現したが, いずれも感染力価は低かった。 5.病魚の脾臓磨砕液を用いてマダイとブリ稚魚に実験感染した結果, 両魚種ともマダイの自然発病魚と同様の症状を呈して死亡し, これらの魚種に対する病原性が確認された。 以上の一連の試験結果から, マダイに発生した大量斃死はイリドウイルスの感染に起因すると結論された。

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© 日本魚病学会
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