日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
地域在住高齢者における足部の問題と転倒の関連性―共分散構造分析による検討―
桜井 良太藤原 佳典深谷 太郎渡邊 麗子齋藤 京子安永 正史村山 陽吉田 裕人西川 武志新開 省二渡辺 修一郎
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2012 年 49 巻 4 号 p. 468-475

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抄録

目的:足部の問題は移動機能を中心とした身体機能の低下や転倒と強い関連があることが報告されているが,足部の問題と身体機能低下,転倒との相互関連性を包括的に検討した研究は少ない.そこで本研究では共分散構造分析を用いて,地域在住の高齢者の足部の問題がどのように転倒経験に関連するか検討した.方法:地域在住高齢者112名が健康調査に参加し,足部の問題(皮膚の炎症,爪の肥厚・巻き爪,歩行時の足部・足趾の痛み)の程度と下肢の運動機能に対する評価(歩行不安,つまずき易さ,立位時の易疲労性:主観的機能評価),転倒歴を質問紙によって聴取した.加えて下肢運動機能の検査(歩行速度,Timed up & Go test,開眼片足立ち)を行い,身体機能検査を完遂した107名(平均年齢±標準偏差=73.0±5.5)を解析対象とした.足部の問題と主観的機能評価,下肢運動機能,転倒における相互関連性を明らかにするため,共分散構造分析を用いて最適なモデルを検討した.結果:足部の問題が下肢運動機能低下と主観的機能評価の低下に関連し,下肢運動機能低下と主観的機能評価の低下の両者が転倒に繋がるのではないかと想定し,仮説モデルを構築した.共分散構造分析の結果,足部の問題は下肢運動機能低下と有意な関連はなく,主観的機能評価と有意な関連性が認められた.また,下肢運動機能と転倒経験の関連性は認められず,主観的機能評価のみが転倒経験と有意な関連性を示し,このモデルは高い適合度を示した(GFI=0.959,AGFI=0.912,CFI=0.981,RMSEA=0.043).結論:本研究の結果から,足部の問題が潜在的に運動機能に対する評価の低下を惹起し,この主観的な運動機能評価の低下が高齢者の転倒と関連しているケースが存在することが示唆された.ここから高齢者の足部の問題に対するケアは,身体機能低下を呈していない高齢者に関しても重要な介入であると考えられる.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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