2012 年 49 巻 4 号 p. 442-448
目的:我々が開発したFI-J(Frailty Index for Japanese elderly)を使用し,介護予防健診を受診した高齢者を対象として,「虚弱」の予知因子を評価することを目的とした.方法:群馬県草津町において2005年に実施された介護予防健診(70歳以上の住民対象)受診者でFI-Jにより「虚弱」なしと判定されたのは357名であった.本研究では,このうち2007年に同町において実施された同健診もしくは健診未受診者調査でFI-Jに応答した334名を研究対象とし,2007年の虚弱の有無別に2005年の対象者の特徴から「虚弱」の予知因子を調べた.統計学的方法は,2007年の「虚弱」の有無を目的変数,「虚弱」の発生と関連のあった2005年の項目を独立変数としたロジスティック回帰分析を用いた.結果:追跡期間中に45人(13.5%)の虚弱の発生が認められた.性,年齢は強制投入し,ステップワイズ法によってロジスティック回帰分析を行った結果,高血圧既往の有無,握力,アルブミンが「虚弱」の発生の予測を説明する因子として検出された.それぞれの「虚弱」の発生無しに比べた「虚弱」の発生ありの調整済みOdd比は,順に(「なし」に比べて「あり」が)2.55(95%CI:1.24~5.25),(1 kg減少するごとに)1.08(同:1.00~1.16),(0.1 g/dl減少するごとに)1.22(同:1.03~1.46)であった.結論:高齢者の握力の低下(筋力の低下)が虚弱の予知因子であることは,海外の先行研究においてよく知られており,本研究により,我が国の健診受診者という比較的健康度の高い高齢者においてもそれが当てはまることが確認された.また,高血圧による血管障害によって「虚弱」が引き起こされている可能性も認められた.さらに,アルブミン値が「虚弱」の予知因子として検出されたことから,高齢者の低栄養やそれにともなう痩せを予防することが「虚弱」の予防のために重要である.