日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
第51回日本老年医学会学術集会記録〈会長講演特別企画:社会が求める老年医療への展開―高知大学老年病科の軌跡―〉
3.高齢者に多い24時間自由行動下血圧の日差変動
大塚 邦明
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2009 年 46 巻 6 号 p. 488-492

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抄録

目的:7日間連続24時間自由行動下血圧(ABP)を記録し,ABPの日差変動と加齢との関連性を検討した.方法:40∼79歳の地域住民514名に,携帯型血圧計TM2430を用いて7日間連続ABPを記録し,6日間以上の記録が得られた450例(平均年齢58.8歳,男186例,女264例)を,50歳未満の91例(平均年齢41.8歳),50歳∼64歳の192例(平均年齢57.5歳),65歳以上の167例(平均年齢69.5歳)の3群に分類し,ABPの立場からの高血圧診断の日差変動と年齢との関係を,χ2検定にて解析した.ABPの立場からの高血圧診断として,(1)ABP平均値からの診断と,(2)夜間血圧下降度からの診断を実施した.ABP平均値が130/80 mmHg以上である場合を高血圧と定義し,(1)持続性正常血圧,(2)第1日目が正常血圧であったにもかかわらず2日目以降に高血圧が観察される仮面高血圧,(3)第1日目が高血圧であったにもかかわらず,2日目以降に正常血圧が観察される間歇性高血圧,(4)持続性高血圧に分類した.dipping ratioが10%未満をnon-dipperと定義し,(1)persistent dipper,(2)第1日目がdipperで2日目以降にnon-dipperを認めるmasked non-dipper,(3)第1日目がnon-dipperで2日目以降にdipperが観察されるintermittent non-dipper,(4)persistent non-dipperに分類した.結果:40歳∼49歳,50歳∼64歳,65歳以上の各群で,仮面高血圧と間歇性高血圧を呈する住民の頻度は27.5%,39.6%,47.3%,masked non-dipperとintermittent non-dipperを呈する住民の頻度は,55.0%,59.5%,69.7%を占め,高齢であるほど日差変動が大であった(p<0.01).結論:高齢者ではABPに日差変動が大きく,高齢者の高血圧診断と治療評価にABPを用いる場合には,ABP記録の再現性に関する十分な配慮が必要である.

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© 2009 一般社団法人 日本老年医学会
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