日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ヘルスプロモーションの観点に立った退院支援
愛媛大学病院医療福祉支援センターの役割と機能強化に関する研究
櫃本 真聿
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2006 年 43 巻 2 号 p. 161-162

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抄録

ヘルスプロモーションの観点から高齢者等退院支援が行えるように, 平成13年4月に設置された愛媛大学病院医療福祉支援センター (国立大学では全国で3番目) の実践や先進地の訪問調査等を通じて, 大学病院の役割やその充実策について検討した.
当センターの機能としては, 地域医療連携と退院支援の両機能をもち, その他総合医療相談, 病床利活用, ボランティア支援特殊外来の窓口, 心のリスクマネージメント, 医療経営の検討, 学生教育など多方面にわたっている. センターへの総合医療相談件数, 退院支援依頼件数, 患者紹介依頼数など急増しており, ニーズの高さがうかがえる. 退院者の内, 65歳以上が約3分の2を占め後期高齢者 (75歳以上) も3分の1を占めている. 在宅へ直接退院するケースが6割を超え, 当センターと在宅資源との連携はますます重要となっている. また全国先進地医療機関の訪問調査により, 以下のような項目が抽出された. (1)地域医療連携・退院支援を担うセンターの充実強化 (2)スタッフ間・患者・家族・関係機関との目的の共有 (クリティカルパスの活用) (3)自らの「売り」の院内外への明確化 (4)懇談の場を設け, 互いの機関やスタッフ間の関係を構築 (5)紹介・逆紹介率の向上 (6)情報共有の徹底 (7)電子カルテ化と情報公開 (8)市民を対象とした情報提供や病院のアピールなど, 共通する要因は多い. 医療モデルから生活モデルの重視による患者主役の退院支援には, 目的共有による互いの連携が重要であり, そのプロセスが互いのパートナーシップの構築につながる. また, 大学病院の地域貢献の観点から, 中核病院間の水平連携の促進や人材育成を通じて地域の医療システムの構築など環境整備に参画する必要があり, シンポジュウム・研究会等の開催, 地域医療連携に関する学生教育教材の開発などにも取り組んでおり, 今後とも地域を把握・分析しマネージメントできる能力を磨くことの重要性を強調したい.

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