日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
総合機能評価 (CGA) の臨床応用とその意義
西永 正典
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2000 年 37 巻 11 号 p. 859-865

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抄録

総合機能評価 (CGA: Comprehensive Geriatric Assessment) とは, 高齢者医療において患者の生活機能障害を的確に評価し, その軽減と予防に重点を置く老年医学の新たな手法である. それは, 診断治療に加えて, 日常生活動作ADL, 精神心理的スクリーニング (痴呆とうつ状態), 介護, 居住環境などの社会状況を包括的に評価し, これを適切な治療とケアにつなげていくものである.
CGAの有用性は, 入院回数の減少, 入院日数の短縮, 施設入所の減少, QOLの向上, 服薬数の減少, ADLの改善, 死亡率の低下などがあるが, すべてのCGAの検討で必ずしもよい結果が得られているわけではない. そこでCGAをその用いられる形態により, (1) 老年総合評価診療ユニット (病棟), (2) 入院患者に対するコンサルテーション, (3) 外来CGA, (4) 在宅訪問CGAに分けて検討を行った. その結果, 老年総合評価診療ユニット (病棟) におけるCGAの有用性はほぼ認められているが, 他の形態では, その有用性についての結果が一致していなかった. これはCGAが単なる評価のみに終始し, 適切なケア計画が実施されなかったり, 対象の選択が適当でなかったり, あるいは追跡期間が短すぎるなどの要因が関係するためである.
今後は, 医療・介護施設におけるCGAに加えて, 外来や地域在住の高齢者に対するCGAも必要である. 要介護状態になる前に, 高齢者の生活機能障害の進行を予防し, あるいは早期に対策をたてることが重視されるからである. 高齢者の状態に適した効率的で有効なCGAとそれにつながるケアシステムの構築が今後の課題である.

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