日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢にともなう膵外分泌機能の変化
糞便中キモトリプシン活性による検討
松本 秀次原田 英雄田中 淳太郎越智 浩二石橋 忠明武田 正彦吉田 光男三宅 啓文木村 郁郎
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 26 巻 2 号 p. 146-152

詳細
抄録

加齢にともなう膵外分泌機能の変化およびその臨床的意義を検討する目的で, 健常人62名 (20~87歳, 平均51歳), 非膵疾患患者42名 (31~83歳, 平均56.1歳), 消化器疾患のない老人ホーム入居者40名 (63~92歳, 平均77.6歳), 慢性膵炎患者20名 (17~72歳, 平均53.5歳), 膵癌患者5名 (60~76歳, 平均65.4歳) を対象として, 比色法により糞便中キモトリプシン活性 (FCA) を測定し, 以下の結論を得た.
1) 健常人群のFCAは加齢にともなって低下し (r=-0.56, p<0.001), 65歳以上群は65歳未満群よりも有意の低値を示した (p<0.001). 非膵疾患患者群, 老人ホーム入居者群も同様に加齢とともにFCAの低下を示した.
2) 65歳以上の健常人群および老人ホーム入居者群のFCAと慢性膵炎患者群および膵癌患者群のFCAとの間には有意差を認めなかった.
また, 65歳未満健常人群のFCAのM-2SD (14.5U/g) を正常下限値に設定した場合の異常低値出現率は, 65歳以上健常人群52.4%, 老人ホーム入居者群62.5%, 慢性膵炎群55%, 膵癌群60%であった. したがって, 高齢者においてはFCA検査法には膵疾患診断法としての価値はない. しかし, 膵の病態の把握, 治療効果の判定, および経過観察においては有用であることが示唆された.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top