日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
アルギニンによるインスリン分泌に及ぼす加令の影響
竹村 喜弘吉江 康正
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1978 年 15 巻 6 号 p. 607-613

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抄録

我々は, 21歳より79歳までの健常成人20名に0.5g/kgの塩酸アルギニンを30分間にて点滴静注し, 投与前, 投与後15, 30, 45, 60, 90, 120分に採血し, 血清インスリン及び血糖を測定し, 次の如き結果を得た.
1) 20~39歳の群では, 点滴開始後15分にΔIRI 29.4±3.7μu/mlの他群に比し高い頂値を有する曲線を描き, 又ΔBSは30分に, 13.0±3.6mg/dlの頂値, 60分に-9.4±4.5mg/dlの底値を有する二相性の曲線を描いた.
2) 40~59歳の群では, 30分にΔIRI 19.2±5.7μu/mlの頂値を有する曲線であり, ΔBSは30分に14.0±5.0mg/dlの頂値と60分に-3.0±5.8mg/dlの底値を有するやや減弱した二相性の曲線を描く.
3) 60~69歳の群では, 30分にΔIRI 6.7±2.7μu/mlの低い頂値を有する曲線であり, 又ΔBSは30分に8.7±3.5mg/dlの頂値を有する一相性の曲線を描く.
4) 年齢とアレルギニンによるインスリン分泌との関係をみるために, 年齢を横軸にΔARIを縦軸にとると, 相関係数r=-0.70 (p<0.01) の有意の逆相関関係を示す.
5) 年齢を横軸にΔBSを縦軸にとって, それらの関係をみると, 相関係数r=-0.16であって相関関係を認めず, 又ΔIRIとΔBSの間にもr=0.37と相関関係を認めない.
6) アルギニンによるインスリン分泌は高齢者になるにしたがい低下してくる. このことは, 加齢による膵インスリン分泌能の低下によりもたらされるものと思われる.

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