日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
末期認知症高齢者の肺炎の苦痛に関する系統的レビュー
平原 佐斗司山口 泰弘山中 崇平川 仁尚三浦 久幸
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2021 年 58 巻 4 号 p. 610-616

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抄録

目的:末期認知症高齢者の多くが肺炎を合併して死亡するが,その苦痛は明らかになっていない.本研究の目的は末期認知症高齢者の肺炎の苦痛を明らかにすることである.方法:医学中央雑誌Web版,MEDLINE(STN)/EMBASE(STN),Cochrane Libraryから検索式を用い,「末期認知症高齢者の肺炎の苦痛は何か」を含む5つのCQに該当する文献を検索し,604論文を抽出した.アブストラクトを用いた一次スクリーニングで該当する42論文を抽出,二次スクリーニングで17論文を採用し,このうち本CQに該当する6論文を解析した.結果:食べられなくなり脱水等で死亡する末期認知症高齢者に比べ,肺炎を合併して死亡した末期認知症高齢者は不快感や呼吸困難が強かった.肺炎で死亡する末期認知症高齢者の観察された症状は,咳・痰・呼吸困難などの呼吸器症状,発熱,意識レベルの低下などであった.末期認知症に肺炎を合併し,改善した例では,呼吸困難や不快感などの苦痛は診断当日が最も強く,死亡した例ではこれらの苦痛は死亡約一週間前から出現し,死亡前日にかけて最大化していた.死亡前数日では,疼痛,呼吸困難,不穏・興奮など複数の苦痛が混在していることが多かった.結論:末期認知症高齢者の肺炎急性期と肺炎による看取り期は不快感や呼吸困難などの苦痛が強いため,積極的な緩和ケアが必要である.

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© 2021 一般社団法人 日本老年医学会
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