日本食品科学工学会誌
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研究ノート
セイヨウナシ ‘バートレット’ およびチュウゴクナシ ‘千両’ のセミドライフルーツ加工適性
藤原 孝之乾 良充池永 充伸小宮山 誠一柳原 哲司
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2020 年 67 巻 10 号 p. 384-391

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抄録

三重県工業研究所が開発した新製法によりセイヨウナシ ‘バートレット’ とチュウゴクナシ ‘千両’ をドライフルーツに加工し,特に追熟に着目して製造適性や品質を検討した.両品種ともに,追熟しないもの,並びに15 °Cで5日および10日追熟させたものの3種類の試料を供試した.‘バートレット’ の生果は,追熟により明らかな果肉硬度の低下や芳香の発生が認められ,追熟10日がほぼ食べ頃に相当した.一方,‘千両’ は追熟による特性の変化が小さかった.マイクロ波照射による前処理と熱風乾燥による製法(新製法)と,マイクロ波照射を行わない方法(従来法)により,それら果実を加工した.両品種ともに,新製法は従来法に比較し,熱風乾燥時間が短く,ドライフルーツの外観品質も明らかに高かったため,マイクロ波処理の効果が大きかった.新製法によるドライフルーツについて,順位法による官能検査と,物理的特性の測定を行った.両品種ともに,追熟するとドライフルーツの色彩がやや明るくなったが,官能検査による外観の嗜好には影響しなかった.‘バートレット’ は,追熟10日のドライフルーツが追熟しないものに比べて柔らかく,西洋梨特有の味がして良好という評価であった.‘千両’ は,追熟の有無によるドライフルーツの官能特性に明らかな差異は認められなかった.以上のことより,‘バートレット’,‘千両’ ともに新製法により良好なドライフルーツが作製可能であり,前者では追熟果を用いることが望ましく,後者では特に追熟は必要としないことがわかった.

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