日本食品科学工学会誌
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定量的記述分析法による市販の生しょうゆと火入れしょうゆの評価および日本のしょうゆの特徴の体系化
今村 美穂片山 弘
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2017 年 64 巻 7 号 p. 343-354

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抄録

市場に流通している生しょうゆと火入れしょうゆの官能的な品質の違いを客観的に示すことを目的として,異なるメーカーで製造された市販の生しょうゆおよび火入れしょうゆ6対,計12銘柄のQDA (Quantitative Descriptive Analysis)による詳細な分析を行った.また,得られたQDAの結果と過去の知見11) を統合し,日本のしょうゆから見出される91種の特性をフレーバーホイールとして体系化した.さらに,これらの過程で以下の知見を得た.

(1) 12銘柄の生しょうゆおよび火入れしょうゆは48種の官能特性を呈した.これら特性のうち,13種は本研究が初めての報告であり,エステル系の特性や穀物系の風味,グリーンな香りが多いことを特徴とした.

(2)生しょうゆは,火入れしょうゆと比較して,甘味,旨味に加え,大豆の風味が強いという特徴を有した.その一方で,火入れしょうゆは苦味,渋味·えぐ味,後味の苦味が強かった.

(3)今日,日本で市販されている多くのしょうゆは20∼25種の共通する特性を有した.しょうゆの品質評価においては,それぞれのしょうゆに特徴的な特性を見出すだけでなく,基本的な特性のバランスの評価が重要と考えられた.

なお,しょうゆや和食に対する嗜好性の確立や継承にしょうゆの苦味が与える影響の評価,および生しょうゆと火入れしょうゆの旨味の差異に対するメイラード物質の寄与の評価は,今後の課題と考えられる.

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© 2017 日本食品科学工学会
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