2015 年 29 巻 2 号 p. 236-240
症例は67歳女性.右乳癌術後の化学療法中に無顆粒球症による重症肺炎,敗血症を発症した.人工呼吸管理,薬物療法で全身状態は改善したが,右上葉に約8 cmの空洞を伴う肺膿瘍となった.抗菌薬投与と気管支鏡による膿瘍ドレナージを施行したが奏功しないため手術を行った.空洞切開術及び右前胸壁に開窓術を施行して膿瘍腔内の浄化を図り,二期的に胸骨吊り上げバーを使用して胸骨後経路で有茎大網による空洞内充填・開窓部閉鎖術を行った.術後経過は良好で充填術から18病日後に退院となった.大網充填法は通常,経横隔膜経路が選択される.本症例では膿瘍腔が前方に存在した事と,高度の癒着が予想されたため胸骨つり上げバーを利用した胸骨後経路を選択し比較的容易に大網を充填することができた.