症例は53歳女性. 1993年に健康診断で胸部異常陰影を指摘されたが放置していた. 2003年6月より咳嗽と胸痛が出現し近医を受診した. 縦隔腫瘍を疑い精査目的にて当院に紹介された. 胸部CTでは気管分岐部および左上前縦隔に嚢胞性病変を認めた. 自覚症状の増悪を認めたために, 気管分岐部の嚢胞に対し気管支性嚢胞もしくは心膜嚢胞を疑い, 摘出術を施行した. 分岐部腫瘤は最終的に気管支性嚢胞の診断を得た. 術後の胸部CTでは左上前縦隔腫瘍の変化は認められなかったが, 胸腺嚢腫を疑い胸腔鏡補助下胸腺左葉切除術 (チェンバレン手技) を施行した. その結果, 左上前縦隔腫瘍についても気管支性嚢胞の診断を得た. 気管分岐部と左上前縦隔に重複発生した気管支性嚢胞の一例につき報告する.