熊沢蕃山の水土論は江戸初期における儒仏の法や葬祭儀礼に深く関係している。本稿では、蕃山の水土論の思想内容を究明して、なおかつそれを思想史的に位置づけることを試みたい。まず「水土」に関する蕃山の基本概念を明らかにし、ついで儒仏の法に対する彼の批判的立場を探る。つぎに、山鹿素行と西川如見のそれぞれの水土論を取り上げて考察し、蕃山のそれと比較対照する。次いで、中国宋代の喪祭儀礼の現状に触れ、ついで江戸時代の儒者たちの葬祭論を類型別で論述する。そして蕃山の著述に立ち入って彼の葬祭論を追究する。そして、蕃山の思想的立場を明確にしながら、彼の水土論を思想史的に位置づけてみる。最後にまとめにえて、江戸時代の儒者たちの『文公家礼』への取り組みや、彼らの儒礼認識の中国と朝鮮で説かれた礼学・礼論との関わり方などを今後の研究課題に設定する。