膵臓
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特集 膵切除後の合併症とその対策
膵切除後の消化吸収障害と低栄養,脂肪肝について
加藤 宏之水野 修吾岸和田 昌之伊佐地 秀司
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2019 年 34 巻 4 号 p. 157-165

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抄録

膵癌をはじめとする膵切除症例の増加とその予後の改善に伴い,膵切除後の消化吸収,栄養障害,脂肪肝などが近年,注目されている.膵頭十二指腸切除(PD)では膵頭部と十二指腸が切除され,消化管再建が加わることにより消化吸収形式が術前から大きく変化し栄養障害をきたす.またPD術後では,膵外分泌機能不全,低栄養,下痢が原因となり高率に脂肪肝すなわちNAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)が発症し場合によってはNASH(nonalcoholic steatohepatitis)に移行することがあるため,膵酵素剤を中心とした積極的な栄養療法を行うことが重要である.膵体尾部切除(DP)では膵切除量に伴い術後栄養障害を来すことがありPD後と同様の治療が必要である.また,膵全摘(TP)症例は周術期並びに遠隔期においても,糖質を中心とした栄養管理が重要であるが,高齢患者や術前より栄養不良が認められるような患者においては術後栄養管理に難渋することがあり,根治性を損なわない限りにおいて,残膵を温存する膵頭側亜全摘(proximal subtotal pancreatectomy:PSTP)を考慮する必要がある.

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© 2019 日本膵臓学会
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