2009 年 24 巻 1 号 p. 100-107
今回我々は,膵漿液性嚢胞腺腫と,術前診断に苦慮した肝門部神経鞘腫の合併例を経験したので報告する.症例は66歳,女性.心窩部痛を主訴に受診.腹部CT, MRIで膵尾部に径25mm大の嚢胞性腫瘍と肝門部に径50mm大の充実性腫瘍を認め入院した.膵尾部嚢胞性腫瘍は主膵管と交通しない多房性嚢胞性腫瘍で,Dynamic CT, EUS, MRIによる画像診断上,漿液性嚢胞腺腫と診断しえたが,肝門部腫瘍は充実性であり,MRI拡散強調画像での著明な高信号やFDG-PETの強い集積所見により悪性腫瘍を否定できず手術を選択した.病理組織学的に膵尾部嚢胞性腫瘍は漿液性嚢胞腺腫,肝門部腫瘍はAntoni A型の神経鞘腫と診断された.この二者の合併は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.