症例は53歳の女性.C型肝硬変フォローアップ中に急速な増大傾向を示す卵巣腫瘍を認めた.術前の画像や血液検査などから境界悪性の可能性が最も高いと考えられ,切除が必要と考えられたが,非代償性肝硬変(Child-Pughスコア10点,class C)の状態での,骨盤内を大きく占める卵巣腫瘍に対する手術は,周術期のリスクが非常に高いと考えられた.結果として,一期的な卵巣腫瘍摘出術と非代償性肝硬変に対する生体肝移植を施行した.卵巣腫瘍摘出術を先行し,腫瘍を摘出した後,右葉グラフトを用いた生体肝移植術を施行した.術後経過は良好で,移植後5年の時点で卵巣腫瘍の再発は認めていない.開腹術周術期のリスクが高い肝硬変患者に肝外腫瘍が認められる場合は,各科と連携し,一期的な手術を行うことが根治治療となりうると考えられた.