薬物性肝障害の診断には, 本邦ではリンパ球刺激試験 (DSLT) を重視した診断指針 (薬物と肝研究会, 1978年) が用いられている. 一方欧米では臨床所見や過去の報告等を点数化した診断指針 (Maria, CIOMS) が用いられている. 我々は薬物性肝障害を疑った58例について, DLSTの意義と各診断基準の相互関係について検討した. その結果, 日本の診断基準でみるとDLSTは感度59.5%, 特異度100%, 陽性適中率100%, 陰性適中率48.5%であったが, CIOMSの基準では43.4%, 60%, 92%, 9.1%であった. 本邦の診断基準に比しCIOMSの基準は診断域が広く, Maria の診断基準の compatible case を包括していた. 各診断基準と臨床病型・被疑薬の種類との間に一定の傾向はなかった. 以上より, DLSTは有用な検査ではあるが, 陰性であった場合でも薬物性肝障害を否定できず, 診断能には限界があることから, 臨床的情報を加えた新しい診断基準の設定が必要である.